半村 良
魔女街
目 次
魔女街
魔王街
幻《まぼろし》 町《ちよう》の女
最初の夢
窓辺の円盤
中年天使
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魔女街
一日中あたりの空気を激しく震わせていた帯鋸《おびのこ》の甲高い音が急にやんだ。
「だから……」
工場を背にして帯鋸の音に負けまいと大声を出していた貧相な四十男が、そう言いかけて喋《しやべ》るのをやめ、うしろを振り返ってから普通の声になって言った。
「だから組合なんてくだらねえって言うんだよ」
紬《つむぎ》康平は頷《うなず》いて見せ、
「俺《おれ》はどうでもいいんだ。本当は組合なんか関係ないよ。でも、みんな今度のことで熱くなってるし、俺だけ知らん顔をしているわけには行かないもの。それに、給料があがるのは悪いことじゃないし」
.......